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親孝行のすすめ Part. 2

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ライフ・エッセンス/親孝行のすすめ2
 

20代を振り返る・・・。

 

 振り返れば恥ずかしい限りなのですが、わたしの20代なり立ての頃を振り返ってみたいと思います。
 わたしは大学進学による上京を機に、両親と離れて、すぐにその都市生活に溺れ、その毎日に流されるように生活をしていました。
 圧倒的に自由な学生生活の中に、憧れの都会は、もう自分にとって手放しで、勘違いな、今思い返しても、赤面で顔から汗がしたたるような素行ぶりでした。
 それでも一生懸命に手探りのような生活をして、そして自分のことだけに一生懸命でした。

 こうして一気に開けた学生生活と自由の中で、家族のことを乱暴に考えたことはありませんでしたが、かなり無関心になってしまったのでした。
 その状況で、自分は家族に対して、悪いことは何もしていないのだからと単純な考えのもと、当たり前ですが年々老いていく両親のことをそれ以上考えることをせず、それで善しとしていたのでした。
 純粋無垢にエゴイストだったと思います。周りの学生も、たいていそうであったにせよ、今思い返しても、たいへん残念に思い、親孝行やそれ以外のことでも、またその時その時できたであろう大きな可能性をまったく活かすことがなく、乱暴に学生生活を送ったのでした。

 それからいままで、もちろん犯罪や暴力といったことで、人様や親に迷惑をかけたことは一度も無く、普通に生活を重ねてきたわけですが、そのかわり親が喜ぶことも、前向きにしてはいませんでした。
 しかしわたしが成年して、いくら年を重ねても、親にとっては、いつまでも子供なのですね。自分の目の前で、どんどん老いていく両親は、しわを増やしながらも、昔と同じようにわたしを守り続け、何かと面倒を見てくれようとしています。
 まったく、恥ずかしい限りです・・・。いまこうして振り返られるようになるまで、自分にとって、これだけの長い年月が必要だったとは・・・。人としての、ポテンシャルの低さを思い知らされます。

 その頃のわたしの親への意識をもっと掘り下げて見ると、「親のありがたみ」とか「孝行」とか、きちんと考えたこともかたちや行動で示したこともないのに、親孝行と言う道徳観に対して、単純に偽善ぶった嫌なものだと思っていたのでした。
 その頃の大学時代の友達に、大学を卒業したら、親が年老いて心配だから、実家に戻り仕事を手伝っていく、と言った友達がいたのですが、当時のわたしには信じられない思いなのでした。せっかく上京して卒業したら、人生の謳歌はこれからなのに、なぜもっと都市生活を楽しまないのだろうと、単純なエゴイズムのもと不思議に思ったのでした。
 そういったわたしでしたので、先祖の墓参りも、帰省した際に、親にうながされて極めて機械的にしかしたことがありませんでした。ことごとく与えられた恵みというものを、当たり前と考え、そして恵みの源泉である親には無関心だったことがわかります。

 その後、都市生活にもまれ、それなりに苦労をし、ようやく親というものに向き合うようになり、先に書いた松下松蔵さんの無償の奉仕を行った人柄、そして親孝行の逸話と出会い、それに確実に老いてきた両親の姿を重ねて、情けないのですがようやくそれをきっかけにして、わたしはを「孝行」というものに、やっと視点の焦点が合うようになったのでした。
 そのとたん、必然的に突如、気づいたことがあります。親の人生は、わたしが思うより長くはなく、子として恩を返し敬愛を尽くす時間としては、未熟なわたしにとって、たいへん短いものであること。また同時に今の自分は、恵まれた環境に心底感謝したのでした。いまならまだ自分には、孝行できる両親がいます。まだ間に合うのです!・・・そう、いま思って、まだわずかなことしか出来ていませんが、少しずつでもいいので、親に対して自分ができることは必ずするように心がけています。
 それでもわたしが社会的に出来ること、様々な生活の面倒を見ることで出来ることは、たいへん少なく情けなく思うのです。

 いままで満足に、親孝行とは何か、向き合うことがなかったからでしょう、自分が幸せになることに後ろめたさを感じていました。
 でも今は、はっきり幸せを自分から発散し、両親に表現しています。「わたしは幸せです。」両親にそれを伝えることほど、両親が喜んでくれることはありません。
 一見、おこがましいようですが、子としての「幸せ」が、親への最高の「親孝行」だと思います。

 そしてその「幸せ」ですが、自分が幸せであるということは、「誰か、自分がいることで幸せでいる人がいる」ということが前提であると思います。自分だけが幸せと思える状況は、本当の幸せではないと思います。
 「幸せ」になるためには、・・・・昔から、もちろん今も、人生最大のテーマだと言えます。
 「親孝行」という「親」を幸せにする徳を実現するために、先に書いた理由で、まず誰かを幸せにする、幸せな自分になりましょう!妻や恋人、家族、友人を幸せにする力と姿勢を身に付けましょう。
 疲れて悩み苦しんでいるとしても、誰かの幸せを守り育てるあなたでいる努力をしましょう。きっとそれが結果として、自分の幸せの一番近道だと思います。

 誰か幸せにしたい人がいるのなら、常に自分をベストの状態に持っていくよう心がけたいものです。
 なぜなら、幸せにしたい人が、苦しみや悩みの荒波にいるとき、救えるのは、同じ荒波に溺れてしまう状況のあなたではなく、荒波に立ち向いそこから救う力をきちんと持ったあなたなのです。
 相手が溺れそうなほど、苦しみ悩んでいるとき、自分だけが明るく楽しくあると、後ろめたく考えるのは、不適切です。水に溺れている人を、泳げない人が助けられる可能性は、低いのですから、お互いがお互いのそういったもしもの時を考える意味でも、楽しく明るくあるベストな状態を維持すべきです。
 そうしてお互いが手に入れて維持している「幸せ」が、見守るそれぞれの親への「孝行」だけではなく、関係するさまざまな人へ広がってゆくでしょう。

 わたしが思う、この自分の「幸せ」は、「相手の幸せ」があって成り立つものですから、それだけのことを実現させる湧き上がるものを、常に自分の中に持っていないといけないと思っています。
 そうして明日が今日よりも充実した生活を送り、たいしたおじさんにならなくてもいい、ただ、わたしが誇れる「わたし」になっていることを誓いたいと思います。今の自分、頑張れ!!!

 

子に頼らない親。

 

 少しわたしの両親について書かせて頂くと、父は今の実家に、ある事情の元で離れて暮らすことになった、父の祖母の元へ養子としてもらわれてきました。
 もともと実家は明治から続く自営業を営んでおり、多くの昭和の世代がそうであったように、地元で立派に一代を築いたのでした。そこで結婚したことで母が加わり、両親は自分たちの力だけで、日々の生活を切り開いてきました。
 そして商売を繁盛させ、自分たちの生活のみならず、その両親への補助金や兄弟たちの教育費などで、決して少なくない額を仕送りしたのでした。
 一度は会社を起こしたのですが、今はまた会社から退き、田舎の過疎化とともに縮小していく市場の中で、ほそぼそと自営業を営んでいます。老齢にして、父は、まだ鉄のような気力を持ち、母は決して枯れることのない活気を持っています。

 そんな両親なので、特に子供には力を貸すことがあっても、誰にも頼ることを考えていません。普通でしたら、もう子供の稼ぎでなんの心配もなく、日々生活する年齢です。それでも、子供を当てにせず、子供に借金やその他の負担をかけないよう、毎日の生活を考え、商いにいそしんでいます。

 わたしは今の今まで、当てにさせるような頼もしい存在でなかったのも事実です。それでも両親は、わたしを信じてくれています。
 力もない自分が「いままで何もしてなかったね、ごめんね。」という言葉だけで、両親は喜び涙を流します。両親に見せてもらってきた後姿のおかげがあって、わたしもいままで、前向きに人生を歩んでこれたようなものです。

 いま自分に両親がいなくなれば、大きな精神的な後ろ盾が失う感じが否めず、まだまだ自立していない弱いわたしの心がはっきりしてしまうでしょう。
 わたしは、今だに情けないほど、とても弱い人間です。

 親子の間でも、骨肉の争いを繰り広げ、殺人事件にまでなったニュース・報道が珍しくない今の世の中にあって、極端かもしれませんが、これだけ温かい存在が普段の自分にあるとは、信じられない程の奇跡と思えるようになってきました。
 そう気が付くと、こんなに心根が情けない自分にも、このような家族という天国があります。わたしも、これから生まれて来る子供にとって、天国のような存在であろうと誓いました。

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